耐震
建築物の使命は「生命と財産を守る」ことです。 地震大国の日本にとりまして建築物の地震対策、耐震は大変重要な機能となります。日本建築学会の「市民のための耐震工学講座」によりますと、1880年の横浜地震(M5・5-6)が日本地震学会設立のきっかけとなり、1906年のサンフランシスコ地震(M8・2)を調査した佐野利器により日本における耐震設計法の基礎的な考えが作られました。
以後、関東大震災(M7・9)を受け翌年の1924年に耐震計算が義務付けられ、福井地震(M7・1)の2年後の1950年に建築基準法が作られるなど度重なる地震の経験が耐震に対する研究を進歩させ、1980年に新耐震基準が作られました。このように建築物は確実に「耐震的に」進化していますが、建築物の耐震的な進化に合わせて、耐震性に優れた鉄骨構造建築物に対する期待はますます大きくなっています。
ただ、1981年以前に建てられた建築物には新耐震基準が適用されておらず、建築物の耐震補強が必要とされています。こうした耐震補強工事でも、鉄骨系の補強工法が最も経済的でかつ工期短縮が図れる工法として高く評価されています。このため、多くの耐震補強工事現場で鉄骨系の耐震工法が採用されています。
エコ
最近、地球環境問題や循環型社会指向から建築物にもエコが求められています。いわば建築物の長寿命化や資源のリサイクルですが、この問題にも鉄骨構造建築物が優位性を発揮しています。
日本の建築物が短命の理由としてある学者は、不動産取引(更地の方が土地の値段が高い)、設計図や改修・メンテナンスの履歴がわからず安全性が確保できない、鉄筋コンクリート構造の場合、耐震壁が間取り変更の障害になるなどを挙げています。鉄骨構造建築物の場合、耐久性に優れているほかラーメン構造(柱、梁の各接点が剛に接合されて一体となっている骨組)では耐力壁が不要なので、間取りの自由度が高く、リフォームも容易であるなど長寿命化が可能です。
さらに、解体、組立が容易であり、鉄スクラップとしてリサイクルできるほか部材そのものをリユースすることも可能です。このように鉄骨構造の建物は、エコ社会においてますます重要な役割を果たす建築物といえます。